令和7年度 校長あいさつ

 本校は、愛媛県の南西部に位置し、南予地方の宇和島市にあります。宇和島市は宇和海と鬼ヶ城山系に囲まれた城下町で、宇和島城は現存する12の木造天守閣のひとつであり、国の重要文化財に指定されています。また、多種多様な柑橘類栽培、日本有数の生産量を誇る真珠や鯛・ブリの養殖、じゃこ天や蒲鉾等の練り製品加工が盛んな魅力あふれる地方都市です。中心となる水産・海洋関連産業は、これまで衰退産業と考えられていましたが、世界に目を向けてみると、養殖魚のニーズの高まりや物流面での海運業の役割が増すなど、今では大きなチャンスのある成長産業として注目されています。

さて、本校は昨年度に創立80周年を迎えた県下唯一の水産・海洋系の高等学校です。これまで、「和敬・克己・勤勉」の校訓のもと、水産・海洋関連産業の担い手として多くの人材を輩出してきました。現在は、本科が海洋技術科、水産増殖科、水産食品科の3科、専攻科が漁業科・機関科、水産増殖科の2科編成となっており、地域や水産・海洋関連産業界等と連携し、地域に貢献する海のスペシャリストの育成に努めています。しかしながら、少子化に伴う生徒数の減少、情報化、グローバル化の進展などにより、県立高等学校・中等教育学校を取り巻く環境が大きく変化する中、愛媛県教育委員会が策定した「愛媛県県立学校振興計画」で令和9年度から宇和島南中等教育学校と統合され、宇和島南高等学校水産科として新たな歴史を刻むことが決定しています。宇和島南高校は総合学科と水産科が併設された学校となりますが、新校開設準備委員会の協議は順調に進んでおり、今年度中にはより魅力的な教育課程や校歌・制服等が決定します。この統合によって、歴史ある水産高校の名前が消えることとなり、水産・海洋系高等学校の将来について心配の声もありますが、本校は今回の統合をピンチと捉えるのではなく、チャンスと捉え、新校では、これまでの水産・海洋教育を引き継ぎながら、より良い教育の実現を目指していくので心配無用です。統合に向けて本校の象徴である大型実習船6代目「えひめ丸」の建造も決まり、現在は設計が終了し、今年度から造船(竣工は令和9年度の予定)がスタートします。また、地域水産業の活性化に向けて、「えひめ水産業次世代人材育成事業」も実施されることとなりました。産官学金コンソーシアムを構築することで、水産業に貢献する人材育成に関しての持続可能な仕組みづくりにも取り組みます。

また、本校は今年度から地元宇和島市のバックアップを受け本格的に全国募集に取り組むこととなりました。これまでも県外出身の生徒が入学していた実績はありますが、地域の少子化の影響を大きく受けている現状を鑑みて、積極的に県外の生徒を募集します。詳細については随時ホームページ等を通じてお知らせします。全国の「海が好き、船が好き、魚が好き」という中学生の皆さん、本校で学び、水産・海洋分野で活躍しませんか。本校は企業や大学と連携した商品開発や研究活動、また国内だけでなく、長期航海実習でハワイに寄港したり、アメリカ・台湾・ベトナム等の海外でマグロの解体ショーを実施したりするなど、生徒が活躍する場が多くあります。ホームページやインスタグラム等でも情報発信していますので是非ご覧ください。

最後になりましたが、宇和島水産高校として忘れてはならない4代目「えひめ丸」の事故から令和8年2月10日で25年の節目を迎えます。これからも事故のことを後世に伝えるとともに、感謝の気持ちを忘れず、命の尊さ、家族や仲間の大切さなどを、生徒と教職員が共にしっかりと学び、成長する学校として、教職員一丸となって教育活動に取り組んでまいりますので、本校へのご支援ご協力を賜りますよう、よろしくお願いいたします。

 

愛媛県立宇和島水産高等学校長 川野 光正